世界一ひとにやさしい現場を、世界へ —— 建ロボテックと「海外で戦う場所」をつくるまで
建ロボテックの海外展開において、投資接続から現場訪問、シンガポール法人設立まで伴走した記録。技術を世界の現場で使われる価値に変えるため、壁ごとに必要な仲間を組み替えていった。
香川県で生まれた建ロボテック株式会社は、「世界一ひとにやさしい現場を創る」を掲げ、建設現場で人とともに働く協働型ロボット「トモロボ」シリーズを開発してきた。
建設現場の人手不足は、日本だけの課題ではない。ならば、日本で生まれたロボットを海外へ持っていけばいい。
言葉にすれば簡単だ。
しかし、海外展開には技術とは別の壁がある。
誰に会えばいいのか。どの現場へ行けばいいのか。現地の制度にどう対応するのか。法人は必要なのか。誰と会社をつくるのか。そして、海外展開を始めるための資金を誰と組むのか。
建ロボテックとリバネスの長谷川が一緒に越えてきたのは、ロボットそのものの技術課題ではなく、技術を世界で使われるものにするための壁だった。
投資家を紹介するだけでは、資金調達支援にならない
建ロボテックが海外展開を本格化させる前に必要だったのが、事業を成長させるための資本だった。
2022年2月、建ロボテックはシリーズAで総額2.7億円を調達した。リード投資家となったのは、現在のUntroD Capital Japanにつながるリアルテックファンドだった。モバイル・インターネットキャピタル、いよぎんキャピタル、中銀リース、エンジェル投資家もこのラウンドに参加した。
この接続を長谷川が支援した。
ただ、L VENTURESにおける投資接続は、投資家を紹介して終わる仕事ではない。
問うのは、その資本で何の壁を越えるのかだ。
建ロボテックの場合、その先には国内での製品開発だけでなく、「世界一ひとにやさしい現場」を本当に世界へ広げるという構想があった。
資本は目的ではない。
次の壁まで進むための手段である。

海外市場は、資料を読んでもわからない
建設現場は、国が変われば大きく変わる。
鉄筋の規格も、工法も、労働者の構成も、ロボットを導入する意思決定者も違う。
日本で売れている製品だからといって、そのまま海外へ持っていけば売れるわけではない。
建ロボテックは海外展開を模索する中で、リバネスがシンガポール経済開発庁・シンガポール企業庁と進めていたGlobal Innovation Alliance(GIA)を活用した。
東南アジア最大級のイノベーションイベントSWITCHでは、シンガポール建築・建設省(BCA)と面談。実証場所の準備、シンガポール国内での展開、さらに東南アジアの建設会社への接続について協力関係をつくっていった。
長谷川も建ロボテックと現場へ入った。
現場を見ることで、日本と同じ課題と、日本とは異なる課題を切り分けられる。
市場調査ではなく、次に越えるべき壁を見つけるためだ。

「シンガポールに行く」から「シンガポールにいる」へ
現地を訪問するだけでは、海外事業は続かない。
建ロボテックが次に決めたのは、シンガポールに自らの拠点を持つことだった。
ここでも必要だったのは、法人登記の代行だけではない。
どのような事業戦略で現地法人を置くのか。誰に相談するのか。会計事務所をどう選ぶのか。オフィスをどこに置くのか。銀行口座をどう準備するのか。
リバネスシンガポールは、現地法人の戦略策定から、法人設立に必要な士業とのコミュニケーション、会計事務所の選定、現地オフィスの手配、銀行口座開設準備まで伴走した。
そして2023年2月25日、建ロボテック100%出資の現地法人 KEN ROBOTECH ASIA PTE. LTD. が設立された。
同日には、リバネスが主催する超異分野学会シンガポール大会2023の壇上で、その設立を発表した。
訪問先だったシンガポールが、自社の事業拠点になった。
同年11月にはUOB銀行で海外法人口座を開設し、シンガポールドルや米ドルで海外取引ができる事業基盤も整えている。
拠点をつくると、見える課題が変わる
海外法人をつくること自体がゴールではない。
むしろ、そこからが始まりだった。
シンガポールに拠点を持った建ロボテックは、国外のレギュレーションに対応しながら、政府系デベロッパーとの実証を進めていった。
さらに、現地にいるからこそ得られる一次情報を蓄積し、日本とは異なる建設現場の課題を捉え始めた。
海外展開も広がっている。
2024年にはドイツのBau Motor社とヨーロッパでの販売代理店契約を締結。シンガポールだけでなく、欧州・北欧へロボットソリューションを広げる動きも始まった。
「海外へ売る」から、「海外で事業をつくる」へ。
その変化には、現地に自分たちの拠点を持ったことが大きい。
壁を越えるたび、必要な仲間は変わる
建ロボテックとの取り組みを振り返ると、必要だった支援は一つではなかった。
資金が必要なときには投資家とつなぐ。
市場が見えないときには、一緒に現場へ入る。
海外で事業を継続する拠点が必要になれば、現地法人をつくるための専門家や実務者を集める。
一つの会社が産業化していく過程では、壁が変わるたびに、必要な仲間も変わっていく。
だからL VENTURESは、決められた支援メニューから何かを選んでもらうのではない。
いま目の前にある壁を見つけ、その壁を越える旅団を組む。
建ロボテックが掲げるのは、「世界一ひとにやさしい現場を創る」というミッションだ。
「世界一」と言う以上、その現場は日本国内だけにあっても完成しない。
香川で生まれた技術が、シンガポールへ渡り、現地法人になり、世界各地の建設現場へ向かい始めている。
海外展開とは、外国に製品を持っていくことではない。
その国で仲間をつくり、現場に入り、事業を続けられる場所をつくることなのだ。
(文 長谷川)
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